DIORAMA

Rasbora dorsiocellata macrophthalma
ブルーアイ・ラスボラ


NATURE AQUARIUMを意識した水草水槽において、そこに泳がす魚の選定はとても頭を悩ますところです…。当たり前ですが魚は生き物なのでその存在感は一種一種が違うわけですね、故にその魚が放つ存在感は水景の雰囲気を大きく変えてしまう影響力があります。近年NATURE AQUARIUMがジオラマ化していると嘆いている方がいらっしゃいますが、ジオラマはNATURE AQUARIUMと通じるものがある様に私は思います。DIORAMA(ジオラマ)とは…19世紀初頭、フランス人風景画家で後に写真発明家となったルイ・ジャック・マンデ・ダゲールが、画家ジャック=ルイ・ダヴィッドの弟子シャルル・マリ・プートンと共に、従来のパノラマに代わる新たな投影装置を開発したものを「Diorama」と名づけたのが最初なんだそうです。箱の中に風景画と展示物を置き、その箱の一つの面に設けられた窓から中を覗きこむと、照明などの効果によって本当に風景が広がっているかのような錯覚をさせる見せ物として人気を博したそうです。時を経て現在私達が思うジオラマとは少々ニュアンスが違う様にあると思います。NATURE AQUARIUMとは、その名の通り「自然」をAQUARIUMの中で再現させる手法でありますが、その要素の中に自然で見た「風景」があります。風景を表現する要素はまさにDIORAMAであり、水槽という箱の中を覗き込むと、水草や流木、石などの素材の質、遠近感や立体感を感じさせた視覚効果は、配置や色彩などを組み合わす事で風景を模す事が出来るのだと思います。


この様にDIORAMAは水槽の中に風景を作る上で大事な要素と言えますが、
NATURE AQUARIUMは、DIORAMAと言う言葉で納まりきらないのは、NATURE AQUARIUMは生きた素材が主であり尚かつ生態系を維持する為のバランスも必要となると言う事です。さながら水槽の水は大気に置き換えられ、大気汚染が進むとあっと言う間に環境は破壊されてしまいます。天野氏が生前、「NATURE AQUQRIUMを通して自然の尊さを感じてもらいたい」と唱えていらっしゃいましたが、この小さな環境を維持する難しさやバランスがとれた水景の美しさは、NATURE AQUARIUMでしか味わう事の出来ない魅力の1つなのかも知れませんね…。


話しは反れましたが…そんな水景の中で泳ぐ魚の大きさや習性も景色の一部だと言う事が言えます。風景のスケールと魚の大きさのバランスが実は凄く大事で水景に対して大きな魚をチョイスしてしまうとまるでゴジラの映画の様なスケール感になってしまいます…。とはいえ、魚もAQUARIUMにおいて大変魅力的な生き物ですから、好き嫌いも相まって水景をとるか魚をとるか?で悩まされる事も多々あります。昨年の9月に初めて本格的なNATURE AQUARIUMを立ち上げた私が撰んだ魚はマレー半島、インドネシア原産の小型のラスボラで背ビレの黒いスポットとブルーに輝く眼が美しい種です。飼育は容易で温和な性格でサイズも3センチ程度にしかならない小型種で群れて泳ぐ習性はピカイチだと思います。私の中でボルネオをリスペクトした水景を作ったつもりなので、現地に自生しているミクロソリウムやクリプトを配した東南アジアなレイアウトであればよりリアルに魅力を味わうことができるのだと思います。


水景の上層を群れて泳ぐ様は、まるで小鳥が群れをなして空を飛んでいる様に見えてしまうのは、DIORAMAのトリックに私は掛かってしまっているのかも知れません…

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